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中小企業こそランチェスター戦略を参考にしたマーケティングで勝ちをめざそう

大企業と異なり、資本やリソースほかあらゆる点で不利な中小企業がこれからのご時世に生き残っていくには? 規模が小さな企業でも選べるような特殊な手段が必要ではないでしょうか?

といっても、そのような都合の良いものは探そうとしてもなかなか見つかることはありません……しかしそんな中で「ランチェスター戦略」は、中小企業にとって非常に使う価値がある理論といえます!

ランチェスター戦略とは何なのか、その戦略はどのように立てたらいいのか、どう使ったらいいのか~と、この独特のマーケティングのテクニックについてまとめてみました。悩める中小企業にこそ気付いてほしいですね!

ランチェスター戦略とは? どうして中小企業にこそ大事なのか?

1.ランチェスター戦略とはいったい何?

「ランチェスター」とは英語圏にみられる姓のひとつ。19世紀から20世紀にかけて活躍したF.W.ランチェスターという名の技術者が唱えた「ランチェスターの法則」が、日本ではいつしか経営論として名声を博しました。ランチェスターの法則は競争にみられる法則をまとめたもので、もともとは戦争において常にみられる原則を意味していました。

1-1.ランチェスター戦略の種類

ランチェスターの法則は、以下のように2種類に分かれています。

そして、どちらの法則も以下の3つの要素で計算されていますね。

  • 戦闘力
  • 武器の効率
  • 兵力の数

さて「戦闘力」というものが「武器」と「兵の人数」が多ければ多いほどアップすることは、おそらく子供でも理解できることでしょう。

ところが図のように、戦闘の状況によって決定的な違いが生まれるのです。「第一法則」があてはまるのは、1対1の戦いです。ゲーム等で言う「白兵戦」といった状態ですね。

しかし現代の戦争や紛争は、もはや兵隊や軍人が武器を振りかざしながら肉弾戦をやるような代物ではなくなっていますね……飛行機や空母から射撃を繰り返したり、ミサイルやロケットを発したり~と、殺傷力の高い武器を使う時代になっています。

そのような理由から、軍備に費用をかけている国同士がもし争うなら、兵の数を二乗して計算する必要があるのです。兵の数が2人なら、4人分の戦闘力を発揮できます。兵が3人なら9人分です。

そしてこの考え方は、経営においてもまるごとあてはまるのです。

1-2.戦闘の法則から経営の法則へ

戦争・紛争 経営
戦闘力 営業力
武器の効率 質的経営資源
兵力の数 量的経営資源

※質的経営資源とは、新たな技術や商品の開発・発明をする能力を意味します。
量的経営資源とは、社員の人数のほか、企業活動をする環境・設備等を意味します。

企業経営において、大企業にあてはまるのはもちろん第二法則のほうです。社員数が多く、社内環境にも恵まれている大企業はその強みを生かして、独自の商品開発・技術開発等ができることでしょう。したがって、そのマーケットで経営に成功する上でとても潜在能力を持っており、有利だということになりますね。

しかしそのいっぽう、中小企業の場合はどうなってしまうでしょうか?

ランチェスターの法則、経営戦略にどうあてはめたらいいのか

1.弱者の戦略とは

中小企業は、社員数も少ないですし、結果として資本金も足りません。大企業と比べたら、設備等も比べものにならないでしょう。いうまでもないことですが、大企業と正面から勝負できる状況ではありません……。

しかしそんな、脆弱な中小企業が日本の経済を支えていることもまた事実。


「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」の発表によると、平成28年度の集計で中小企業の数は99.7%に達したとのことです。これは、ずっと前からほとんど変わっていない数字ですね。今後も変わらないのではないでしょうか。

しかし見方を変えてみましょう。「企業の寿命は短い」なんて言いますが……日本の中小企業がことごとく長生きできないわけではありません。しっかり生き延びているところがたくさんあるはず。弱者には弱者なりの戦い方があるはずでしょう。実はランチェスター戦略の「第一法則」にそのヒントが含まれています。これこそが「弱者の戦略」と呼ばれている解釈ですね。

「第二法則」が当てはまる状況であれば、社員数や環境といった量的経営資源に恵まれている大企業はどんどん有利になっていきます。しかし「第一法則」が常に適用される状況なら? 社員数や環境・設備の違いがそれほど目立たなくなりますね。結果的に、大企業と中小企業の間の格差が緩和されることになるでしょう。

もちろん、「第一法則が常に適用され~」なんてシチュエーションはなかなか見かけないでしょう。マスコミがよくスポットライトを当てるのは、大企業がひたすら目立つ様子ばかり。大企業が目立つのは結局、巨大なマーケットでしょう。しかしマスコミが取り上げないだけで……、第一法則が適用されないマーケットは実は驚くほどたくさんあります。大企業があえて手を伸ばそうと考えない、小規模なマーケットであれば第一法則は成り立ちやすくなるはずでしょう。

2.強者の戦略とは

さてここで、反対側にある「強者の戦略」にも軽く目を向けておきましょう。大企業は、その圧倒的なマンパワー等にものを言わせてマーケットを支配するやり方を好みます。

・戦場で言うなら?

→1対1による戦いになる接近戦なんかを避けようとしますね。それよりも、相手方の兵からなるべく距離をおいて、広い範囲で戦おうとするでしょう。

・経営で言うなら?

→マーケット全体での勝負を仕掛けようとするでしょう。不特定多数の消費者のニーズに合わせた戦略を繰り出します。豊富な物資を投じることで、マーケット全体を支配できるようになるのです。たとえば、安価かつ質がそろった大量生産品を用いた勝負をするのであれば、大企業はことごとく勝利を収めることでしょう。

3.弱者の戦略と強者の戦略を比較すると? 小が大に勝つ戦略を!

ここまでの流れを図で表現するなら、次のようになるでしょうね。

弱者である中小企業にとっては、いわゆる「ニッチな市場」「ニッチなターゲット」がねらい目ということになります。大企業にとっては、限られたマーケットはもともと魅力的に見えません。そこでの儲けを目指してがんばって、実際に成果を出したとしても……ニーズが制限されているのですからたいした利益にはならないでしょう。

しかし中小企業にとっては、小さなマーケット・小さな利益であっても狙う価値は出てくるはずです。

ではどうやったらいいのでしょうか? 小(弱者)が大(強者)に勝負を挑むのは無謀ですが……第一法則を思い出してみましょう。

「武器の効率×兵力の数」=戦闘力
※ただし、接近戦・1対1の戦いが実現する環境で

この条件を成立させて、勝負を挑むには……?

①まず大企業がワザワザ狙いたいと思わない、限られたマーケットを選ばないといけません。
②その状況であれば、社員の数や設備等の影響は一気に落ちます。
したがって、武器の効率をアップさせれば勝機が見えてくるでしょう。
③商品やサービス、技術の質を向上させるなどの作戦が考えられます。
④大企業がそれまでと変わらず、人員等を割こうとしなければ?
中小企業の全社員が一丸となって戦えば、じわじわと有利な戦局になっていくことでしょう。

このような流れでの勝負を実現させるために、新たな原則が3点提唱されています。

その1 奇襲の原則

→接近戦&1対1の戦いを成立させるために、大企業のスキを突く

その2 武器の原則

→兵力を増やすのではなく、武器の効率やクォリティをあげる方向で努力する

その3 集中の原則

→広範囲ではなく、限られた戦闘地で優勢勝ちできるような人員配置を目指す

ランチェスター戦略のメリット&デメリット

1.中小企業がランチェスター戦略を導入するメリット

ではいい機会ですから、中小企業にランチェスター戦略がオススメの理由をわかりやすく整理してみましょう。

1-1.人材の数・資本力etc.に頼らずともマーケティングやプロモーションに成功する機会を獲得できる

大手企業と張り合わなくても、自社の商品・サービス・技術等を売り込めるチャンスを開拓できるのです。

1-2.現在の日本社会に、第一法則を応用できる土壌が広がっている

昭和の中頃までは、今よりずっと消費者の動向が画一化していた時代だったことが数々の史料から明らかにされています。悪く言うと「マスコミを通して、ヒットしたものに全員が、わっと飛びついていた」のです。

しかし現在は、ネットがありますし消費者ひとりひとりが情報を選択する時代です。このため現代の消費者は好みが多様化しています。

1-3.特定の消費者層に、的を絞ったプロモーション戦略をかけることが可能である

たとえばTVやラジオのような放送、大手新聞のような紙媒体は、不特定多数の消費者に一気にプロモートしたい場合に適していますね。
しかし、一部の層にアピールしたい場合はどうでしょうか? 残りの層にとっては不要な情報ということになるでしょう。したがって効率のよい宣伝とはいえません。
しかしWebの仕組みを活用すると、特定の層にプロモートすることは難しいことではありません。たとえばSEOやリスティングのような、Webの検索システムを用いた集客手段箱の目的を果たすために最適といえるでしょう。

2.中小企業がランチェスター戦略を導入するデメリット

メリットをご説明したところで、デメリットがないかどうかも探ってみましょう。
もっともランチェスター戦略には、「デメリットらしいデメリットはない」という意見も多いですし、以下の特徴は深刻な弱点ではありません。

2-1.内容が絶えず変化するため、常にきめ細かな研究や調査を繰り返す必要がある

ランチェスター戦略では緻密な分析やデータ収集が欠かせません。絶えず変化する市場の動向を把握しなければならないためです。

したがって、少し前の方法論であっても突如として役に立たなくなってしまうリスクはじゅうぶんに考えられるでしょう……しかしこれは、粘り強く研究に取り組むことで問題なく回避できるはずです。

2-2.ニッチな市場を狙って成功してもそれが大きなマーケットに変わってしまうこともあり得る

基本的には大企業は、ニッチなマーケットやニッチな需要には手を出さないものです。しかしそこで大きく成功してしまうと、追随する企業は少しずつ増えていく可能性が高くなります……中小企業が追随することもあれば、大企業が目を向けることもあるでしょう。
そうなったときに、はっきりとした参入障壁を設けていればその後も対抗できるでしょう。しかし真似しやすいビジネスであった場合は、大手が本腰を入れて乗り出してくると形勢は悪化するはずです。

ランチェスター戦略の主な事例

ランチェスター戦略が功を奏した実績の中から、特に有名なエピソードをご紹介しましょう。

1.Appleの場合

Appleは、ランチェスター戦略の活用に長けていることで以前から有名でした。この巨大企業は、他社の先行している商品を、よく研究して自社の製品に応用してきた歴史があります。
たとえば、iPodは、SONYがかつて力を入れていたウォークマンからヒントを得て(ウォークマンにない付加価値をプラスして)発売したヒット商品ですね。これは中小企業にはなかなか真似できないことですが、それでもランチェスター戦略を立派に応用した例として参考にすべきでしょう。

2.ソフトバンク

ソフトバンクは、パソコン専門の雑誌をこれまで数点発刊してきました。「Oh!PC」「OH!MZ」等の雑誌が出た当時、すでに大手出版社はさまざまなパソコン誌を出していたのです。そこに勝負をかけるにあたって、ソフトバンクはあえて内容を絞り、特定のメーカーの製品ばかりを取り上げさせました。既存の雑誌が、幅広い商品を扱っていたこととは対照的です。結果的にこれらの雑誌は(一時的にですが)売れ行きを伸ばすことに成功しました。その結果、ソフトバンクがかかわっていたソフトウェア製品の売り上げも向上したのです。

ランチェスター戦略を導入するには? どんな手順があるのか

ランチェスター戦略のやり方は多種多様ですが、この場ではオーソドックスな方法論をご紹介しましょう。

1.自社を取り巻く状況を客観的に分析する

ランチェスターの法則に合わせて、自社の状況を冷静に振り返る必要があります。

・自社の基本的な情報(マンパワー・資本力ほかさまざまな経営資源)
・同業他社と比べたときの、規模等の違い
・自社の持つ強み
……etc.

2.競合企業に負けている点、優れている点を徹底的に研究する

自社の研究の次は、他社の研究が必要です。同じ業界で、同じ地域で競争相手となっている企業すべてを
念入りに分析しましょう(大企業だけでなく、同程度の中小企業も含みます)。

3.客層を絞り込む

中小企業の場合は、すべての顧客にまんべんなく売り込もう……としても大企業には勝てないわけです。そこで思い切って、優先順位の高い顧客に絞ったほうが成功することも多いのです。

ターゲットとなる客層を決めたら、その客層を改めて徹底的に分析しましょう。ターゲットが何を考えているのか、何を求めているのか探ることで、次の戦略が徐々に浮かび上がってきます(必要に合わせて、アンケート調査等を実施して顧客の意見をヒアリングすることも大切です)。

4.差別化をはかる

顧客が求めているものがはっきりと見えてきたら、そのニーズに合わせて他社との差別化を進めましょう。
差別化は、自社の「武器の効率」をアップさせる上で不可欠のルート。ターゲット層にとって利益となる形で差別化できれば、集客は自然と成功します。商品・サービスのコンセプトを強く顧客に印象付けることにもつながります。

※ここで誤解してはいけない点は、ユニークな方向性を追求しすぎないということ。
他社にない特徴は大切ですが、顧客が求めていないことをやっても売り上げにはつながりません。

5.そのほか、自社の「武器の効率」がアップする条件を検討し、実行に移す

大企業と同じことをやっても太刀打ちできませんし、「大企業にはない強み」「自社ならではの強み」を探し出すことがベストですね。

このとき、よく中小企業で選択されている方法とは何でしょうか?
それは「何らかの条件で、マーケットを絞り込む」という手段ですね。客層以外にも絞り込めることはたくさんあるのです。

  • 価格を絞り込む
  • 営業エリアを絞り込む(下記参照)
  • 商品・サービス等のジャンルを絞り込む
  • ……etc.

大切なことは、自社がナンバーワンになれる絞り込み方を検討することでしょう。

※また、できればその際に、他社がまねしようと思ってもなかなかまねできないやり方を考えたいところです。うまくいけば、それは参入障壁となって長期的に他社との競争を回避させてくれます。

さて、この場ではランチェスター戦略で行われるテクニックのひとつ「ドミナント戦略」の追求についてもご紹介しておきます。ドミナント戦略は、導入しやすいことから人気がありますね。

これはわかりやすく書くと、自社のビジネスの拠点となるエリアを設けようというもの。自社のオフィスや店舗が営業している地域に的を絞って、集中的にサービスを追求していきます。

たとえば小売業や飲食店の場合や、特定の地域にいくつもの店舗を開くことで、その地域に密着したビジネスを展開できます。こうすることで地域の在住・在学・在勤の消費者に向けて、自社の存在を強くアピールできるのです。顧客の囲い込みという点で見ても、この方法は理にかなっています。

6.成果を収めたあとも継続して、PDCAを回しながら粘り強く取り組む

マーケットの様子は常に変動しています。油断せずに継続的に研究を重ねて次の手を打つことが理想的ですね。

PDCAとは、以下の4つの頭文字をまとめた言葉です。

Plan:計画
Do:実行
Check:評価
Action:改善

ランチェスター戦略を立てたら、実行するたびにその結果を落ち着いて振り返りましょう。その結果を踏まえて、改善に取り組んでいくべきです。

(まとめ)中小企業が大企業に勝つための手法が「ランチェスター戦略」

ランチェスターの法則を深く理解すれば、どんな中小企業でも売り上げを伸ばし、顧客を獲得するチャンスを手にすることができます。

  • 中小企業が、豊富な人材や設備に恵まれている大企業と同じ戦略を選んでも成功は望めない
  • ランチェスター戦略の「第一第二則」「弱者の戦略」を参考に、マーケットの絞り込み等を目指すことで勝機が見えてくるようになる
  • 現代社会は、消費者の嗜好が多様化しているため、ニッチな戦略を仕掛けやすい風潮となっている
  • 客層の絞り込みや差別化の推進、ドミナント戦略等を通じて、早めに自社の状況にぴったりのマーケティング・プロモーションを進めることがすべての中小企業に求められる

なおランチェスターの法則をまったく知らなかった場合は、なかなか上手に着手できないかもしれませんが……、導入を支援してくれる企業も最近は簡単に見つけられますね(気軽に相談に応じてくれるところも登場しています!)。

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